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日々雑感、ときたまミニSS。
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なんか 

とある曲を聴いていたらこんなものがうまれまんた。
寝ろっての俺ww


『つづきはこちら』からよろしければ。珍しくあまあまアンザク。ちょっと日記SSにしたら長い希ガス…

















これだけ待たされたんだ。だから、

 

あんたが帰ってきたなら、

 

駆け出して、

両手を広げて、


嫌と言うほど抱き締めて。

 

 

 

 

 

 

■embraces■

 

 

 

 

「おーい、ザックス、いつまでそうしてるつもりだよ?」


夕暮れの迫ったミッドガル。
いつもの訓練も終り、他のソルジャーが一人、また一人と次々自室へと帰る中、ザックスは一人、訓練場に居残り、ある『場所』をそわそわと気にしていた。
カンセルはそんなザックスに、声を掛ける。


「いつ帰ってくるかなんて、わかんないんだぞ?」
今回の任務は長引きそうだ、と言ってたんだろ?カンセルはそう続ける。しかしそんな事はお構いなく、趣味のスクワットに興じるザックスは、
「いいんだよ、俺が待ちたいから待ってるだけなんだから」

(…そりゃ分かるけどさ)
ザックスの返答に、カンセルは溜息を吐きながら呟いた。

 

「じゃあ、俺も帰るからな?お前もそこそこにしてちゃんと休めよ?」
「おう。じゃーまた明日な」

 

 


最後まで付き合ってくれたカンセルが去り、訓練場にはザックス一人が取り残された。
しかし『ある場所』には、未だ何の気配も無い。その場所とは。

ヘリポートへと続く、『鉄扉』。ヘリで任務に赴き、帰還する者は必ずこの扉をくぐる。
ザックスは、もう数ヶ月、徹夜で、とまでは勿論行かないけれども、この扉が開くのを待っていた。


(今回の任務は長期戦になりそうだ。その間)
自分の頭をくしゃくしゃと撫でる掌。

(訓練をしっかりやるんだぞ。それから―)
そして、

(俺が居ないからと言って、淋しいと泣くんじゃないぞ?)
唇に優しく触れる熱。

(だっ、誰が泣くかよっ!ガキじゃないんだぞっ!)
確かに淋しいとは思うだろうけれども。

 

 


ザックスはそう言い返して、彼の出立を見送った。
それから、今に至る。

 

 

「全く…」
いつまで待たせるつもりだよ?ザックスは今はここに居ない彼に小さく悪態を吐く。
たった数ヶ月、けれどもザックスにはそれが何年、何十年にも感じる長い長い時間に思えて仕方が無い。

それだけ、一緒に居た時間が長かった。
そして、今では居ないと言う事が不自然にすら思えて仕方ない。

手を伸ばせば、必ずいつも、そばに『あいつ』は居てくれたから。

だから待った。待ち続けた。
その扉を開いて、『彼』が帰ってくるのを。

そして、誰よりも早く、一番に、彼に伝えたい言葉があった。
それは、たった4文字の短い言葉。けれど何よりも伝えたい言葉。そして、それから、

「帰って来たら、あんたが参った、って言うまで―」
この、両腕で。力一杯にしがみ付いてやるんだからな。

そう、ザックスがその際の彼の姿を思い、思わず苦笑した、その時だった。

 

 

「…!」
小さな開錠音。その直後、きい、と言う扉の開く音。そして、それから。


「…ザックスか?」


待ち続けていた、彼の声。
ザックスは声の方を振り返る。するとそこには。


「こんな時間まで、一人でなにをやってる?」


長期の任務でやや疲れている風に見えてはいたものの、いつもの様に眉間に僅かに皺を寄せつつ、呆れた様な表情を浮かべる彼の姿があった。
たった僅かな間だったのに、酷く懐かしく感じるその表情に、


「…アンジール!」


本来なら、今までのパターンだったなら。
駆け出して、両手を広げて、嫌と言うほど抱き締めて。

なのになぜだろう。ザックスは思う。
その足は駆け出すどころか歩くだけでも精一杯で。
さっきまで、「参ったと言わせるまでしがみ付いてやる」と力の漲っていたその腕は上がらず。

「…あれ、おかしい な」


彼の前に立つも、その言葉すら出て来なくて。
柔らかく見下ろしてくる彼のその視線とすらも目を合わせられない。

 


(待ってたんだぞ)
(ずっとずっと)

(淋しかったんだ)

 

あんたが、いなくて。

 

 

不意に視界を潤ませ始めたザックスは、それに気付かれぬ様に必死に足元を見続ける。アンジールはザックスのそんな姿を知ってか、

「…全く、そんな事では、これから先も思いやられるな」

その表情は見ぬ様に、徐にザックスの頭に両腕を回すと、


「ただいま」


そう言って、つんつんと立たせたその黒髪に顔を埋めた。
それと同時にザックスにも近付く彼の温もり。広い胸。
長い任務で汚れ、ややくたびれたそのソルジャー服。ザックスはくっ、と笑って、


「…あんた、くっせー ぞ。ちゃんと、この後風呂入れよな―」
そう悪態を吐きながら、その服の裾をきゅ、と握った。

 

 

 

 

これだけ待たされたんだ。だから、

あんたが帰ってきたなら、

駆け出して、
両手を広げて、
嫌と言うほど抱き締めて。


でも、そんな事、しなくたって。


大切なものは、全部抱き締めていられるんだ。
ザックスはその懐かしい温もりを感じながら、瞳(め)を閉じた。

 

 


「『おかえり』    …アンジール」

 

 


この、小さな掌の中でも。

 

 

 

 

 

 

 


■END■

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